人の動きは、まず心の中で起こり、その心の発生メカニズムは、頭脳が支えます。このメカニズムがなければ、いかなる行動もないでしょう。
したがって、人間の行動を考えるにあたって、頭脳とは、どのような器官なのか、なにを目的として自然がつくり出したのか、そこに目を向けなければならない、と説く科学者がいました。
ビタミンCの発見とジカルボ酸の研究でノーベル賞を受賞したハンガリー生まれのアメリカ人、アルバート・セント・ジェルジ博士です。
ジェルジュ博士は、世界中で世界平和が叫ばれながら、未だに実現しないのは、人間の脳の構造上にあると主張しました。
人間の脳は生存のための器官、人間が生きてゆく上に有利さを見つけ出すようにつくられた器官であって、真理をみつけるためにつくられた器官ではなかった。そのために脳は(自分のために)たんに有利であるにすぎないことを真理としてうける傾向を持っている。私たちは、まずやりたいことをやり、その後に自分たちの行為や欲望を正当化するために脳を使う。
セント・ジェルジ博士著『狂ったサル』より
自然が人間の頭脳を発達させたのは、なにも真理を追究させようとしたのではない、ということでした。食物や安全を求めて、一日一日を生き抜くことができるようにするのが目的で、脳は「たくましく」生きることが、先ず、求められました。
自然は、生物の殺害なくして成り立たず、虎に殺すことをやめるように教えても、笑い返されるのがおちです。笑うのが虎にできるとしたらですが・・・。
ネズミに「汝、盗むなかれ」と説いても、聞き入れないでしょう。飢死してしまうからです。自然は、窃盗させなければ成り立たず、脳は、「うまく」生きることも求められます。
殺しと盗みが、ジャングルの掟です。
しかし、人間社会に、その掟を持ち出したら、どうなるでしょう。
答えはあきらかです。人間社会は成り立たなくなります。
そこで、脳は、「よりよく」生きることが求められました。人間の脳は、「たくましく」生きる古い脳を覆うように「うまく」生きていくための脳、そして、「よりよく」生きるための新しい脳を発達させました。
人間の脳は爬虫類の脳、下等哺乳類の脳、後期哺乳類の脳、そしてヒトの脳の四つの異質な脳からできているといわれています。つまり、ワニ、ウマ、サルが同居しているというわけです。
その人間の脳が、今の文明を築き上げてきたわけですが、その中には、ワニ、ウマ、サルも一緒におり、必ずしも崇高な理念や、真理の探究などという高尚な目的に沿って築き上げられたものとは限りません。ジャングルの掟も反映されています。
人類の歴史は、戦争の歴史であるといわれる由縁です。
ヒトの脳である新皮質系の前頭連合野が、十分に脳内をコントロールできないためではないか、と考えられています。ヒトの脳よりサルやワニの脳が優先される構造が人間の脳にあります。
ヒトの脳で知識をどれほど詰め込んでみても、知識はそれだけでは智慧にはなりません。「わかっちゃいるけど、やめられない」です。本能と知識が結びついたとき、それは智慧になるのでしょう。
ブッダ釈尊の説かれた仏に成る法というものは、それを可能にするものだ、と説いたのが、次の本です。
人間の脳には、ヒト、サル、ウマ、ワニを統合させるカミ、ホトケの脳があり、釈尊の説かれたシステムは、その霊性の脳を開くものであると明かした本です。