亡き人の存在を実感した体験

 もうだいぶ前になりますが、ある阿含宗の信徒に起きた不思議な体験談があります。

 85歳の兄上様が亡くなり、そのお通夜の日に起きました。

 兄上様のお通夜には、家族全員で参列すべきでしたが、都合により、ご主人だけ、欠席し、家で留守番することになりました。自分と御子息たちだけで参列することになったそうです。

 ご主人がひとり、家で留守番をしていました。

「そろそろ法要が開始される時間だなあ」と思いながら、ご主人は、ふとテレビに目を移しました。

 テレビは、電源が入っていません。

 ところが、・・・

 画面に映像が現れたというのです。

 それは、立派な軍服を着た亡き兄上様でした。終戦時、中尉だったそうです。

 亡き兄上様は、大将の軍服を着て、微笑みながら、手招きをしています。兄上様の足元には、すでに他界した友人知人が、元気のない顔で一緒にいたそうです。

 テレビ画面から、亡き兄上様が、

「あなたも早く、こっちへおいでよ。」

と言うのです。

 ご主人は、

「まだやり残したことがあるので、それを済ませてからにしたい。」

と応えました。

 すると、

「そうか」

と言って消えていったそうです。

 私も、10歳のころ、祖母を亡くしたとき、同じような体験があります。

 ただ、映像ではなく、私の場合は、臭覚で訴えてくるものでした。

 祖母が亡くなったという連絡があったとき、皆、病院へ行き、叔母の家で、ひとり、留守番をしていました。

 すると、姿は見えないのですが、私のそばに寄ってきている祖母の気配を感じました。

 私は、一歳になる前に、実母と死に別れ、気がついたら、祖母に添い寝して育ってきたので、祖母の香りがすぐにわかります。

「あ! おばあちゃんだ!」

  私のそばに寄り添ってきた気配をしばらく感じましたが、やがてその気配は無くなりました。

 ただ、それだけですが、子ども心に、人は死んでも、魂はどこかに存在しているという想いを自然に持ちました。