まるで旧知の仲のように

 大阪の京橋から京阪電車の特急に乗って帰るところ、うっかりウトウト居眠りして、降車すべき駅を通り過ぎて終点の出町柳まで来てしまいました。

 仕方なく、引き返すために、始発の準急に乗り、発車の待機をしていると、真向かえに一人の外国人が座って来ました。

 彼は、私と視線が合うと、ニコッと笑顔で挨拶して、流暢な日本語で話しかけてきました。

「私はインド人です。ブッダガヤのそばに私の家があります。インドは行ったことはありますか?」

「いいえ、インドは行ったことないです。」

「よく日本人、観光に来ますよ。」

「そうですか。機会があったら、ぜひ、行きたいですね。」

車両には、他に二、三人の乗客がいましたが、あの二人は、きっと知り合いなんだろう、と思われたかもしれませんが、全くの初対面で見ず知らず同士の会話です。

 彼は、禅に興味がありそうでした。

 こうして、たまたま見ず知らずの外国人にインドのブッダガヤの話を聞いて、私は、京都の祇園には、何度も行っていますが、インドの祇園精舎に行ったことがないなあ、と思いながら、彼と別れて、目的の駅を降りました。