六度の行(六波羅蜜)と七科三十七道品(三十七菩提分法)

 中村元博士編集の図説仏教語大辞典をめくっておりましたら、たまたま偶然、721頁に「六波羅蜜と三十七菩提分法の対照」図が目に入りました。どういう根拠で、こういう図が成り立つのか、説明はありませんでしたが、私にとっては非常に興味深い図でしたので、それを書き写しました。それが下の図です。

三十七菩提分法と六波羅蜜

 『三十七菩提分法』とは、別名『七科三十七道品』とも呼ばれ、釈尊直説の成仏法です。いわゆる仏陀智慧獲得のための七つのシステム三十七のカリキュラムと呼んでいるものです。

 一方、六波羅蜜は、釈尊が涅槃に入られてから五~六百年後に登場してきた大乗仏教顕教のほうで説かれている実践法です。これは仏道の大まかな修行区分のようなもので、特に重要な禅定行と智慧行では具体的なカリキュラムが示されておりません。その分、功徳を積むということに徹底しています。

 私は、全く別々の系統のものと理解しておりましたが、中村元博士が辞典に、このような図を載せておられることに、とても関心を抱きました。二つの良いとこ取りをしているように思います。

 仏さまの慈悲にすがって救済をお願いすると同時に、自分もまた仏さまの慈悲の心を日常生活に実践していくことで、功徳を積む、ということが大乗仏教の教えです。

 しかし、それだけでは不完全で、智慧獲得の仏陀に成る修行がどこかへ置き去りにされています。積んだ功徳により、薄德少福が少しずつ改善されて、仏陀智慧獲得の修行がどんどんできるように、さまざまな妨げがなくなっていくのが、功徳を積む効用で、そこから仏陀智慧獲得の修行がはじまる、そんな考えを思わせる図です。